『遠野物語』は、柳田國男が遠野地方に伝わる民話を採集・編纂し、1910年に発行した、民俗学の先駆けといわれている作品。内容は座敷わらしやカッパ、雪女などの妖怪にまつわるものから、オシラサマや神隠しなど神事にまつわるもの、怪談など、民間に伝聞された話が収録されています。
『遠野物語』の世界をわかりやすく体験できるのが、JR遠野駅から徒歩5分のところにある「とおの物語の館」。語り部が昔話を実演する「遠野座」をはじめ、物語を切り絵や影絵、映像などで楽しむ「昔話蔵」など、子どもから大人まで楽しめる民話のテーマパークです。
4月から11月は毎日、12月から3月は土・日曜、祝日に、昔の造り酒屋の蔵を利用したレトロな劇場空間「遠野座」で、「遠野昔話語り部会」の語り部による昔語りの実演が行なわれています。
「昔、あったずもな~」ではじまる素朴でやわらかい遠野の方言で昔話が語られ、語り部の身ぶりによる表現も多彩。方言がわからなくても物語の世界に引き込まれます。
実演の20分間で語られるのは3~5話。題材はその日の語り部によってよってさまざまです。
お子さんに人気な物語は、長者の家に住む大きなねずみと、仲のよいおじいちゃんおばあちゃんの家に住む小さなねずみが相撲をとる「ねずみの相撲っこ」や、いたずら好きのカッパが改心する「河童淵」などだそうです。
とおの物語の館の支配人・多田さんは、「おばあちゃんたちが語る遠野の昔話を聞いて、正直に生きることの大切さを感じてもらえたらうれしい」と話します。
遠野座で昔話の実演を楽しんだあとは、敷地内の「昔話蔵」を見学しましょう。
座敷わらしや雪女のイラストが出迎える館内では、『遠野物語』だけでなく、『桃太郎』や『鶴の恩返し』といった日本の昔話もマルチスクリーンによる映像や影絵で紹介。エンターテインメント性の高い展示が好評です。
映像ライブラリーや絵本コーナーなどもあり、大人もお子さんも楽しみながら想像を膨らませることができそう。
今度の休日は、「とおの物語の館」を訪れ、奥深い『遠野物語』の世界を、気軽に体験してみませんか?
「とおの物語の館」内には、柳田國男が滞在した旧高善旅館と、晩年を過ごした旧柳田國男隠遁所が移築されていて、柳田の生涯と功績を紹介する貴重な資料が見られます。
遠野市生まれの民俗学者で、柳田國男に遠野に伝わる物語を伝え『遠野物語』の成立に貢献した佐々木喜善。数多くの昔話を集め「日本のグリム」と呼ばれました。
昔語りの題材で人気のカッパ。とおの物語の館から車で約15分の常堅寺の裏にある小川「カッパ淵」は、カッパが現れたという伝説が残る場所です。