JR花巻駅から徒歩15分、マルカンビルの6階に「マルカンビル大食堂」はあります。かつてのマルカン百貨店そのままの場所です。
エレベーターの扉が開き一歩店に足を踏み入れれば、そこは昭和の大食堂。ショーケースにずらりと並ぶ料理サンプルやテーブル、イス、照明、箸立てなど、調度品はすべて旧マルカン百貨店からそのまま引き継いだものだそう。昭和の趣が香る食堂は、大人には懐かしく子どもの目には新鮮に映りそうですね。
ラーメンや寿司、洋食、ソフトクリーム、パフェ…など、メニューはなんと114品以上。今ではあまり目にすることが少なくなったレトロな料理サンプルを眺めてメニューを選んだら、レジで食券を購入しましょう。
広々とした店内には580席ありますが、平日でもお昼時には満席になることも。週末ともなれば食券を購入する人の行列が6階から階段づたいに1階まで続くこともあります。ワイワイにぎやかなのがマルカン百貨店時代からこの大食堂の定番の光景です。
この大食堂の名物といえば、箸で食べる「ソフトクリーム」です。くるくると10段も巻かれた圧巻のビジュアルを誇り、高さはなんと約25センチメートル。テーブルに置かれたレトロな箸立てと背を並べるほどの高さです。
こちらのソフトクリーム、販売当初は一般的な大きさでしたが、旧マルカン百貨店の創業者はお客さんに喜んでもらいたいと「盛りを良くして」が口癖。ある時、テレビの取材中に、創業者の口癖を思い出しはりきったスタッフが、ソフトクリームを10段巻いたのがはじまりなのだそう。
あまりの大きさから、いつしか箸で食べるのがこの大食堂の定番に。ソフトクリームを箸で上からつまむ派、下からすくう派、なかには彫刻のように形をつくりながら食べる造形派など、地元では流派もあるとか。1個のソフトクリームをみんなで分け合って食べる家族の姿も多く見かけます。
こんなにボリュームがあって楽しい10段ソフトクリームですが、180円と驚きの安さです。
厨房が見えるカウンター式キッチンから次々と提供される料理メニューも、閉店前そのままの味が楽しめます。以前と変わらず、「マルカンラーメン」と「ナポリかつ」が不動の人気メニュー。
「マルカンラーメン」は、野菜やマッシュルーム、かまぼこなど具がたっぷりのピリ辛あんかけラーメンです。麺はあんがよくからむ柔らかめの中細縮れ麺。麺の鮮度を大事にしていて、近くの製麺所からつくりたての麺が1日に2、3度届けられます。
数あるメニューのなかでも特に地元リピーターが多いメニューで、物心がつく前からこの大食堂に通っていた現社長の小友康広さんも「マルカンラーメン」をこよなく愛するひとり。
「ナポリかつ」は、まずそのボリュームに驚きます。トマトがジューシーに香るたっぷりのナポリタンと、オーダーが入ってから肉を切る揚げたてカツが丸々1枚乗っています。同じ皿にはサラダもたっぷり。売り切れることが多い人気メニューなので、早めの来店がオススメです。
子どもにオススメのメニューが「カレーライス」。具が少なくも見えますが、玉ねぎやニンジン、ジャガイモなど数種類の野菜をすりおろして入れていて、甘みとコクのある奥深い味に仕上げています。地元の小学生は、家族とはもちろん、町内会やクラブの集まりなどで食べることが多い思い出の味だそう。値段も450円とお手頃です。
幼児の人気メニューは「子ども寿司」。スペースシャトルの器に巻き寿司が乗って登場します。フルーツと風車のおもちゃも付いていますよ。
昭和レトロな雰囲気の大食堂は、花巻市民にとって憩いの場のよう。今度の休日は「マルカンビル大食堂」で家族みんなでワイワイ食事を楽しみ、デザートにはソフトクリームを箸で食べてみてはいかがでしょうか。